看護師といえば病院やクリニックでの勤務を思い浮かべる方が多いでしょう。けれど、近年は看護師資格を活かせる職場が増え、医療現場以外でも豊富な選択肢が広がっています。公的機関や企業、イベント・観光業界、さらには起業や在宅ワークなど、ライフスタイルや興味関心に合わせた多様な働き方が可能です。
今回は、そんな「珍しい求人」たちをまとめてご紹介します。ぜひ、あなたのキャリア形成や働き方改革のヒントにしてみてください。
公的機関でキャリアアップ!
刑務所看護師(法務技官)
刑務所で働く看護師は、国家公務員として受刑者の健康管理に携わります。業務は健康診断から慢性疾患のコントロール、精神面のフォロー、時には緩和ケアまで幅広く、個々の受刑者が抱える複雑な背景に合わせて対応します。医療設備は限られますが、その分、判断力やアセスメント力が強化される環境です。治安上の安全対策が整っているため、1人で危険な対応をすることはほぼありません。安定した福利厚生や雇用が魅力で、特殊な医療知識を習得することで、将来他分野へ転身する際にも強みとなります。
自衛隊看護師
自衛隊の看護師は「特別職国家公務員」として、自衛隊病院や防衛医科大学校病院での医療業務はもちろん、災害派遣や国際支援にも携わります。自衛官看護師の場合、日常的に訓練へ参加するため体力づくりやストレス耐性強化につながり、救護や衛生管理において迅速かつ的確な判断力が身につきます。一方、技官看護師は自衛隊関連施設で一般的な医療業務に集中できるため、臨床スキルを維持しながら安定した勤務を続けることが可能です。国防や災害救援の一端を担える点も大きなやりがいとなるでしょう。
厚生労働省の看護系技官
厚生労働省で働く看護系技官は、看護教育制度の見直し、診療報酬の改定、感染症対策や医療政策立案など、国の医療システム全体に関わる業務を担当します。現場経験を政策レベルへ昇華し、法律や制度を通して社会に貢献できる点が特徴です。資料作成やデータ分析、他職種との調整がメインとなるため、看護師としての洞察力やコミュニケーション能力が大いに活かされます。社会にインパクトのある仕事がしたい、医療現場から一歩引いてマクロな視点で働きたい方には理想的なキャリアパスです。
空港検疫官
国際空港で働く看護師は、検疫官として海外からの入国者に対する問診や検査補助、感染症の水際対策などを行います。SARSやCOVID-19など、新興・再興感染症への即応力が求められる環境です。多言語対応や異文化コミュニケーションが必要な場面もあり、グローバルな視点を養えます。国際保健分野に興味がある方、語学力を活かしたい方には絶好のチャンス。国境を越えて人々の健康を守る醍醐味を実感できる職場です。
運転免許センターの看護師
高齢ドライバーや慢性疾患を持つ方への健康面でのアドバイスや認知機能確認を行います。交通事故を未然に防ぐため、健康面から運転適性を支える仕事です。交通安全に直結し、社会的な使命感が感じられます。一般的には日勤勤務で、医療処置頻度は少なめ。医療知識をベースに、公共性の高い仕事に携わりたい方に向いています。
地域包括支援センター
高齢者が地域で自立した生活を送れるよう、医療・介護・福祉の連携拠点となるのが地域包括支援センター。ここで働く看護師は介護予防ケアマネジメントや健康相談、生活改善アドバイスなど、予防的・総合的なケアを提供します。地域資源を把握し、多職種とチームを組みながら、高齢者一人ひとりの暮らしに寄り添うので、臨床とは違ったやりがいと広い視野を得られます。
教育・研究分野で次世代を育てる
看護教員(大学・専門学校)
看護学生に講義を行ったり、実習を指導したり、教育プログラムを企画したりするのが看護教員の仕事です。臨床経験を理論化し、後進に伝えることで看護全体の質向上に貢献できます。学会や研修、研究活動への参加を通じて、自身も常に最新知識をアップデートできる環境です。学生の成長を支えることで、看護界の未来に間接的に影響を与える重要な役割を担えます。教育が好き、知的探求心が強い方には理想的なポジションです。
企業やオフィスで働く、日勤中心の看護師
産業看護師・企業内看護師
企業内で従業員向けに健康診断の結果フォロー、ストレスチェックの実施、メンタルヘルス相談などを行います。労働衛生や予防医学の知識が求められ、安全で健康的な職場環境をサポートする存在です。土日祝休み・日勤のみなど規則的な勤務形態が多く、プライベートと仕事を両立しやすい点も魅力。健康経営に注力する企業が増えているため、ニーズも高まりつつあります。
コールセンター看護師
電話やオンラインで、医薬品・医療機器利用者からの問い合わせ対応、健康相談などを行うコールセンター業務。直接患者を診ることはないものの、対面では伝わりづらい症状をヒアリングし、的確に助言するコミュニケーション能力が重要です。在宅勤務を導入している企業も多く、子育て中の方や、対面業務に疲れた方にも合いやすい働き方です。
フィールドナース(医療機器メーカー)
医療機器メーカーで、製品導入先の病院やクリニックへ出向き、使い方指導やトラブル対応、操作説明会の開催などを担当。プレゼンテーション力や営業的センスが求められます。新しい医療技術に触れる機会が多く、現場の声を製品改良に活かせる点も面白さの一つ。看護師としての知識をビジネスサイドで活用したい人は、挑戦しがいのあるフィールドです。
治験コーディネーター(CRC)・臨床開発モニター(CRA)
新薬開発のための治験をサポートするCRCは、患者さんへの説明、スケジュール管理、データ収集・整理が主な業務。CRAは治験が適正に進んでいるかモニタリングし、製薬企業側の立場で品質確保に努めます。直接の医療処置は少ないものの、医療の発展やエビデンス創出に関われる点で、やりがいは大きいです。正確性やコミュニケーション能力が問われるため、丁寧な仕事が得意な方に向いています。
献血ルーム・予防接種会場
献血ルームでは採血や献血者への説明、予防接種会場では接種補助や健康相談などが主な業務です。命を救う血液を確保したり、感染症予防に直接貢献したりと、地道ながらも社会的意義が高い働き方です。比較的落ち着いた環境で日勤勤務が多く、技術的にも難易度が高くないため、ブランクのある看護師さんにも適しています。
子どもたちと関わる仕事
保育園・幼稚園の看護師
子どもたちの日々の体調管理、ケガや発熱時の簡易的対応、感染症対策、保護者への健康指導など多岐にわたります。衛生管理や保育士のサポートで、子どもたちの健康的な成長を後押し。小児看護経験がなくても、子ども好きでコミュニケーションを大切にできる人なら活躍可能です。子育て経験があれば、さらにスムーズに業務になじめます。
学校養護教諭・特別支援学校看護師
学校では、日々の怪我や急病対応はもちろん、健康教育や予防指導、保健だよりの作成など、学生たちの「健康の先生」として活躍します。特別支援学校では医療的ケアが必要な生徒も多く、より専門的なケアが求められることもあります。長期休暇や土日休みが確保しやすく、ライフステージに応じた働き方を選びやすい点もメリットです。
児童福祉施設・乳児院
様々な事情で家庭を離れた子どもたちの健康管理や、発達に合わせたサポートを行います。食事や睡眠、衛生管理、予防接種など基本的なケアに加え、心のケアも重要です。成長を見守り、健やかな育ちを支える環境づくりが求められるため、子どもに寄り添う姿勢や柔軟な対応力が活かせます。
観光・イベント分野で非日常感を楽しむ
ツアーナース
修学旅行や社員旅行、観光ツアーに同行し、参加者の健康状態を見守ります。持病を持つ方への投薬補助や、旅先での怪我・体調不良対応など、トラブル発生時に頼られる存在です。体調不良者が出なければ、他の参加者と同様に旅行を楽しめるケースもあり、「仕事しながら旅も満喫」という理想的な働き方が可能。旅やアウトドアが好きな方には絶好のチャンスです。
シップナース
豪華客船や貨物船で医務室を担当するシップナースは、長期航海中に起こる体調不良や怪我への初期対応がメイン。船医と連携し、限られた資源で最善のケアを提供します。国際的な航路では語学力が求められ、海外寄港地では現地医療機関との交渉が必要なことも。クルーズの非日常空間を楽しみながら働ける、グローバル志向の人にぴったりな職種です。
ホテルナース
大型ホテルやリゾート施設で、宿泊客や従業員の体調不良対応を行う「ホテルナース」。医療行為は軽微なものが多いですが、AED使用や応急処置など迅速性と冷静な判断が求められることもあります。基本的には落ち着いた職場環境で、書類整理やデータ入力などデスクワークも多め。観光業界やホスピタリティに興味がある方には魅力的な選択肢です。
イベントナース
夏フェス、スポーツ大会、地域の祭りなど、人が集まる場所には体調不良や軽い怪我がつきもの。イベントナースはその場で応急処置を行い、必要があれば救急機関と連携します。短期・単発のアルバイト感覚で働けるため、副業や空いたスケジュールに合わせて働くことも可能。音楽やスポーツが好きなら、楽しみながらスキルを活かせます。
空港やテーマパーク内医務室
空港クリニックやテーマパーク救護室での看護業務は、国内外から訪れる多様な人々へ対応するため、接遇や語学スキルが生きる場です。急病者対応や怪我の処置を通して、非日常的な空間を医療の面から支えます。常に変化に富んだ環境で働くため、飽きがこない仕事を求める人には好適です。
一人でできる・在宅メインの仕事
看護師ライター
医療・健康情報サイトや専門メディアで、記事執筆や監修を行うライター業務。実務経験を文字情報としてアウトプットするため、読者が理解しやすい解説力が求められます。自宅での作業が基本なので、家事・育児と両立したい人や、自由な働き方を求める人に最適。執筆分野を絞れば専門性を高め、報酬アップも狙えます。
医療系デザイナー
病院案内や医療機器の操作説明、健康教育資料などを分かりやすくビジュアル化する仕事。看護知識に基づく適切な表現で、医療従事者や患者さんの理解をサポートします。デザインスキルさえ身につければ、フリーランスとして独立することも可能。創造性と専門知識を融合できるレアな職種です。
インフルエンサー
SNSやブログ、動画プラットフォームで、医療・健康に関する情報を発信。看護師資格があることで専門性をアピールしやすく、読者からの信頼度も高まります。フォロワー増加に伴い、商品紹介やコラボ依頼、広告収入など収益化のチャンスも拡大。情報発信が好きな方や、医療知識を社会に届けたい方におすすめです。
アートメイク看護師
眉やアイラインなど、顔に色素を注入するアートメイクは医療行為にあたるため、看護師資格を活かせます。美容クリニックや専門サロンで勤務したり、独立して自分のサロンを開くことも可能。最新の美容トレンドや技術を学びながら、人々の「なりたい美しさ」に寄り添える、クリエイティブかつ医療的なキャリアです。
プライベートナース
自費で依頼する訪問看護サービスは、利用者のニーズに合わせて柔軟な対応ができるのが強み。通常の訪問看護より長時間関わったり、高度なホスピタリティを提供したりと、質の高いケアが求められます。その分報酬も高く、スケジュール管理も自由度が高いので、自分らしい働き方を追求したい人にぴったりです。
起業や独立も視野に
訪問看護ステーション運営
自ら事業主となり、訪問看護ステーションを立ち上げることも可能です。高齢化が進む中、需要は高まっており、運営に成功すれば安定した収益を確保できます。スタッフ採用、経営、営業など多面的なスキルが求められるためハードルは高いですが、それだけ自由度が高く、大きな達成感が得られます。
副業からのフリーランス化
看護師ライターやデザイナーなど、副業としてスタートし、軌道に乗れば独立も可能です。在宅ワークや柔軟な働き方を選びやすく、自分の得意分野で勝負できます。リスクはあるものの、成功すれば時間や働く場所を自由に選べるライフスタイルを実現できます。
まとめ:看護師資格は可能性の扉
「看護師=病院勤務」という固定観念を捨てれば、キャリアは想像以上に広がります。国の政策立案から観光支援、美容や教育、在宅クリエイティブワークまで、看護師資格は多彩な可能性を秘めています。自分の興味やライフステージに合わせ、新たな働き方に挑戦してみてください。次のキャリアステップは、あなたの決断次第で無限に開けていくはずです。